STRESS、ストレス
辞書を引くと「精神的抑圧」という意味もあるが「緊張、努力、重点」と言う意味もあることが判った。満更悪い意味ばかりではないらしい。 個の人が別の個の人と接触することによって人間社会が形成される以上、その間に何らかの緊張関係が形成されるのはやむを得ないことである。 人間が動物の本性から完全に独立していないのと同様、人間社会が形成する現状は過去の経緯という束縛から完全に自由にはなり得ない。過去の経緯の上に成り立つ自分と、現状こうありたいと考える自分とにギャップがあるとき、STRESSを感じるのだと思う。 そのようなSTRESSを感じると言うことは、現状を更に良くしたいと考える心が引き起こす葛藤である。と言うことは、向上心があるということの証左でもある。 要は人間にとって適度のSTRESSは必要であり、避けては通れないものである以上、どのようにコントロールし、上手く付き合うかという知恵が大切である。 それについて10年ほど前になるが、産業医をしていた光星内科クリニックの前澤貢院長に聞いた話が、とても良い話だと思うので敢えてこのホームページに掲載して紹介したい。 「STRESSという言葉は Sleep、Trip、Relax、Eat、Sex、Satisfyの六つの言葉の頭文字をつなげた結果できた言葉です。」と院長曰く。 「良く眠り、適度の旅行をして、心を和らげ、良く食べて、恋人や伴侶と愛し合い、自らが置かれた現状に満足するならばSTRESSは解消する。」という説明であった。何となく筆者が過去に触れた「働く」と同じ構造で出来た言葉のようである。アメリカ人も中国人も同じような発想をするものだと感心して拝聴した記憶がある。 確かに「眠らず、会社と自宅のピストン通勤で、常にキリキリし、不規則に食事を摂取し、愛する人も無く、常に現状に不満」を持っていれば、どんな人でも精神的に追い詰められることになる。 現状に満足すると言うことは、「向上心を失う」ということとは同義語ではない。人にはそれぞれ能力と職務がある。どの職務が価値があり、どの職務が価値が無いなどとは言いきれない。人が人として生活する以上どの職務も重要な意味を持っている。そしてどの職務にもそれを全うするための能力が要求される。 むしろその職務を全うするに相応しい能力が、その人に備わっていない場合の方が問題となる。本人もSTRESSを感じるかもしれないが、周りの人間はそれ以上の迷惑を被ることになる。 社長の器で無い人間が社長になり、Bankerの能力を持たない人間が融資担当になると、今回のようなバブルを破裂させ、多くの人々の人生設計を台無しにしてしまう。その責任は万死に値する大罪だと思う。 ならば筆者は、何不自由無く生活できている現状を幸運と考え、コツコツと青白いPASSIONの炎を控えめに燃えたぎらせながら、自らの職分を押し続けてみようと思う。 掲載2000/03/19 |