抵当権

 債務者から目的物の引渡を受けずに、その目的物の上に債権者の為に優先弁済権を確保する担保物権のこと。(民法第369〜398条)

 抵当権は、不動産・地上権・永小作権の他に、立木、船舶、自動車、工場財団や鉄道財団等の各種財団、鉱業権、漁業権、農業用動産に及ぶ。

 この抵当権を第三者に対抗するためには、登記・登録の対抗要件を具備する必要があり、登記受付日時順位の後先でその効力は大きく異なる。

 抵当権は、貸付債権残高と弁済期日後2年分の損害金を担保目的物の競売処分金から優先して弁済を受けられる権利であるが、登記受付の順位が第二位以下であれば先順位の債権者が確保した残りの処分金からしか、弁済を受けられなくなる。

 従って担保物権の処分価額と第一順位の債権者の債権額次第によっては、当該担保物権から債権を回収することは不可能になる。順位の確保はこのように「天と地」ほどの違いをもたらすので、抵当権設定時には慎重に対処する必要がある。

 次に抵当権設定後の特性として、抵当権設定の原因となる特定の債権契約に基づき一部弁済された場合には抵当権によって担保される債権額はその分減額されるという「抵当権の付従性」がある。

 この特性は、複数の抵当権が競合する中で債務者が営業利益の中から一部弁済を行なっている時に重要な差異をもたらす。通常債務者が借入資金の弁済を行なう場合、第一抵当権者と第二抵当権者とに一定の割合で弁済することになるが、弁済を受けた分は抵当権の担保額=限度額から減額され、仮に追加融資を受けても契約が異なるので決して当該抵当権の限度額が増えることは無いという特性である。

 従って後順位抵当権者は、常に先順位抵当権者の貸付債権残高の確認を取ることによって、不測の事態を回避しうるのである。

 この部分が根抵当権と根本的に違う特性である。

 掲載1999/12/28