根抵当権

 民法第398条の2〜398条の22に規定されており、銀行取引や問屋と小売業の間など継続・反復して行なわれる取引関係から生ずる債権担保するために、担保物が負担しなければならない最高額(極度額という。)を決めておき、将来確定する債権をその範囲内で担保する抵当権のこと。

 根抵当権は抵当権と同様、登記しなければ第三者に対抗できないが、抵当権と異なるのは継続・反復する取引の債権を担保するという性格上、債務の弁済によって債権額が消滅しても登記上の順位は変わらない、即ち根抵当権者に対する優先弁済によって次順位の抵当権の順位が上昇することは無いということである。

 一定の極度額の範囲内であれば、債権者が取得したどのような債権であろうとも根抵当権で担保されるかというと、民法第398条の2第2項で「債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるもの(例えば当座貸越取引契約)、一定の種類の取引によって生ずるもの(例えば売買取引、金銭消費貸借取引、製品供給取引)」のほか、第3項で予め債務者との間で合意があれば債権者と債務者との直接取引きとは関係の無い債務者振出の「手形・小切手」についても担保されるとしている。

 但しそれには制約があって、民法第398条の3第2項で「債務者との取引に因らずに取得した手形・小切手は、支払の停止・破産などの事実がある前に取得したものが担保される。」と規定している。即ち「第三者宛に振出された手形・小切手で支払停止後に取得した手形・小切手は担保されない。」のである。

 ここで問題になるのは、先順位根抵当権者と後順位抵当権者の関係である。

 根抵当権を設定しているのは先に述べたような取引関係がある債権者で、一般的には金融機関である。この金融機関は手形割引業務も行なっているので関係会社が保有する債務者振出の手形を容易に割引できる地位にある。

 その地位を利用するならば、実際の債権額と極度額とに差異があれば債務者が支払停止になる直前に関係会社が有する無担保の手形を割引取得して担保債権化することが出来る。

 支払停止になる直前と言うことは、多くの場合債務超過に陥っているのだから、この様な状況下で関係会社が有する無担保の手形を割引取得することは、明らかな後順位抵当権者に対する詐害行為なのであるが、先順位根抵当権者は「支払停止の事実不知」の論理で切抜けるのである。

掲載1999/12/29