地本主義

 かって世界は農本主義(農業本位主義)の時代から産業革命を経て資本主義(資金本位主義)の時代に突入した。日本ではその後何故か地本主義(土地本位主義)の時代が長く続いた後に、バブルが弾けて、割れた風船ゴムのように皺くちゃで主義主張を持たない国民になってしまったのではないかと思うことがある。

 地本主義が悪いわけではない。戦争が起こる一つの原因は民族の居場所としての土地を巡る争いだ。だから民族が拠るべき土地を大切に思い、より良くしたいと思うのは、本能的行動だと思う。土地に根ざさない主義主張はどこか危なげである。

 バブル時の地本主義が非難されるのは、国土の改善という長期的展望に立った開発行為に悪乗りした土地転し屋やゴネドク屋等の暗躍跋扈を防止できなかったことが、最も非難されるべきことだと思う。

 バブルが弾けて10年。地本主義を取巻く環境は以前よりもっと悪くなっているかもしれない。誰もが明日の国土の改善などという書生じみた長期的展望を論ずるよりも、この刹那の現世利益のみを重視し始めているからである。

 特定資産の流動化という概念も国土の改善という視点は2の次、3の次にされて、資金本位主義者の口銭ビジネスの餌食にされつつあると思うのは筆者だけであろうか?

掲載2000/01/23