企業人

 Y2Kも多くのシステム・エンジニア達の努力で大きな問題にならずに10日が過ぎた。そしてもうすぐ21世紀の企業人を採用する就職戦線が始まる。今年もまた厳しい採用抑制があるのだろうか・・?

 法律の世界では、「人間」のことを自然という。そして企業のことを法という。共にという文字を使う。企業に就職するということは、法人の一員として働くということである。このように書くと思い出されるのは、チャペックやフォードの古い形骸化した概念で説明される「ロボット・歯車」論がある。「歯車」は人間性を否定された価値の低い存在であるということを言うための理論である。

 古い教育の教条主義を離れてもう一度考え直してみよう。

 人も会社も共に「」という文字を使ってその実体を表わそうというのが先達達の知恵であるのだから、その知恵を使って、これから入社しようとしている会社、或いは今籍を置いている会社を人の形で表わしてみよう。

 営業は足で稼ぐと言われているから営業員は「足」である。足の中でも慎重な営業マンは「つま先の神経」であり、イケイケドンドンのタイプは多分「踵」だろう。目の前の食べ物を口に入れるのは手だから、受注決裁部門は「手」である。その食べ物が腐っていないかかどうかを判断するのは「目」であり、鼻の「嗅覚細胞」だから、不良債権になるかどうかを判断できる予防法務部門が適任かもしれない。用度係は必要な物品を迅速に必要な部署に配付するのが仕事だからさしづめ「血液」ということになる。お客様苦情賜り係は、お客様のクレームに適切に対応する仕事であるから「声帯」といったところか・・・。

 このように考えると、人間の身体の中に不必要な細胞がどれほどあるのだろうかと思う。

 不景気になると、管理部門は営業が仕事を取れないからだといい、営業は常設部門の支援がないからだと非難する。その結果が定年延長ではなくて早期退職であり、いわゆる日本版リストラへと盲目的に突き進む。

 運動会でビリになったのは足のせいだと言って子供の足を切り取った親がいただろうか?腐ったものを食べて下痢したのは弱い胃袋のせいだと言って胃を切除した人間が過去にいただろうか?

 むしろあいつのせいだ、こいつのせいだと声高に叫んでいる連中(実は他人を批判することは自分の非を隠す格好の手段)、取巻き茶坊主の口上を無批判に聞き入れている脳細胞に問題がありはしないか?

 リストラと叫ぶあなたがリストラ大将。(<===対象の変換誤り)

 身体のどこに問題があるのか、どこの血管が詰まっているのか、どの部分が壊死しかかっているのかを、健康体の時もそうでない時でも常に監視し対策を適切に打つのが脳細胞の仕事だと思うのだか、バブルでたらふく美味いものを食べ過ぎた頭には、糖尿病で腐りかけている足の痛みが解からなくなっているのではないだろうか。

 「勝って兜の緒を締めよ」と戒めてくれる人もいないまま、学業優秀で偏差値も高く人を押しのけて頂点に立つことだけを唯一の目標にして只々動き回るだけで働いてこなかった類の人種が脳細胞になると今回のような悲劇が訪れる。

 ではどのように回生を企てるか。

 脳細胞が石頭でアルツハイマーに侵されていなければ、先ずは、個々の細胞に生きる希望を与えることである。険しいかもしれないが、その先に輝く太陽があることを明確に示すことである。

 そのためには個々の細胞が、何を考え、何を期待し、何を必要とし、どのように活動しているかを謙虚に知ろうとすることである。それがあれば日本人の細胞は再び活力を取り戻すと筆者は信じる。日本人が持っているPASSIONは脈々と流れ続けていることを知るべきである。

 それを可能にする一つの技術がインターネットであり、IT情報技術革命である。

掲載2000/01/10