IT革命、情報技術革命
私のホームページを訪れたあなたにとっては当り前の知識。 1999年半ばまでは「情報化革命」と言っていた様に記憶しているが、化は「化け物」に繋がり抽象的で何の事を表現しているのかわからなくなるから、情報技術革命とするのが正しい表現。 かって蒸気機関が発明されて産業革命が起こったと教わった。何故蒸気機関が革命たり得たのかを考えると良く理解できる。 蒸気機関が発明される前までは、屈強な腕力を持ちギルドに守られた階層が社会の仕組みを作っていた。しかし蒸気機関の発明によって、と言うよりは蒸気機関の有効利用を考え出した人々によって、それ迄の腕力が強いというだけのリーダー階層は生活できなくなってしまった。 だからラッダイト(機械打壊し)運動が旧勢力を中心に起こった。しかし機械技術の進歩は止めることが出来なかった。理由は簡単。より良き生活のためには便利であるにこしたことは無いのだから。 そしてそこで起こったことが劇的な生産の仕組=システム自体の変革であったからこそ、革命たり得たのだと思う。 現代においてはどうだろうか。 IT革命を情報技術産業の革命と思い込んでいる人たちがいる。ていたらくに言うと情報技術産業がこれからの主要産業になり、旧来型の産業は凋落すると思いこんでいる階層である。 この程度の理解だから「情報機器に多大の投資をした割に効果が少ない。これ以上の投資は不要である。」という主張が(斜陽産業になればなるほど)トップ層から出てくる。ちょうどラッダイト運動のリーダーの主張と同じである。 先に筆者は「革命とはシステムの変革だ。」と述べた。 今起こっていることは、正に経営システムの大幅な変革が起こっているということなのである。 「経営システムの変革」とは何か。 それは徳川300年、明治維新後の100年に遡る。過去400年間にわたって日本人が営々と築き上げてきた経営システムが制度疲労を起こして変革を迫られていることに尽きる。 これまでの経営思想のエッセンスは、「寄らしむべし、知らしむべからず」である。 組織を治める者は組織内外に提供する情報を極力制限することによって下々の者の付和雷同を抑止する。情報を持たない下々の者は誤った判断をして打首になってはいけないので常にお代官様にお伺いを立てる。(お代官様とは公務員の方々を意味してないので誤解の無いように。) 寄っていかなければ教えてもらえないので、ハシッコイ人間は擦り寄って教えてもらう。お代官様も擦り寄られると満更でもないので、擦り寄ってくる人間を可愛がる。ここに茶坊主世界やサロンが形成される。 ところが航海技術の発展で、土下座してまでお代官様にお伺いを立てなくとも新しい知識が入るようになった。丁度ペリー来航と同じ。ジョン万次郎も同じ気分を味わったかもしれない。少なくとも坂本竜馬はジョン万次郎から海外の情報を得た可能性が高い。お代官様からお教え頂いたことが必ずしも適切ではなく、明日の暮らしを良くすることにはつながらないかもしれないと下々の者達が考え始めたのである。 そして明治維新に突入することになった。しかしまだ情報は一部の階層の所有に止まっていたので、経営システムの変革には至らなかったのである。 戦争の時代、作戦参謀となる脳細胞は、自らの体の中のどこに自分が必要とする情報を持っている細胞がいるかに大きな関心を持つようになった。情報という栄養を欲しがるのである。 末端細胞もその求めに応じてせっせと情報を提供するのであるが、残念ながらその後集められた栄養がどのように消費されたのか、カルシウム(β-アミロイドが正しい)が付着して石化した脳細胞からは何の説明も得られない。終いには伝達した情報が捻じ曲げられ、不景気を理由に末端細胞が必要とする栄養さえも与えられなくなると、末端細胞は二度と情報を脳細胞には送らなくなった。 この現象がこの「失われた10年間」営々と続いてきたのであるが、一部の脳細胞は情報技術の活用こそ現状打破・回生の手法であると気付いたのである。 現代。インターネットの発展によって、膨大な量の、しかも比較的質の高い情報を下々の者でも得られるようになった。但し、当然の事ながら経営組織体の中にいる企業人が作成したものではないのだから、当該経営主体として100%満足できる情報ではない。しかしそれなりに有用である。 従来の「寄らしむべし、知らせるべからず」では限界に来たことに聡明にも気付いて、経営組織体を維持発展させるには、「周知を図って、衆智を結集する。」という経営システムへの変革をなし遂げねばならないと考える経営者が現れてきたのである。 これからの時代のリーディング・カンパニーになり得る企業は産業の種別を問わずその様な聡明さを兼ね備えたリーダーのいる企業である。というのが、「情報技術革命」の意味するエッセンスであると筆者は考える。 そして今その潮流の中で、したたかに商売のネタを見つけようと考えた人々が「学習する組織」とか、「ナレッジ・マネジメント」とかいう、何となく昔聞いたことのあるような古臭い概念を振り回し始めたのである。 掲載2000/01/10 |