プロジェクト・ファイナンス
プロジェクトに融資された資金の元利金の返済能力をその特定のプロジェクトから生み出されるキャッシュ・フローや、そのプロジェクトの資産担保能力に限定した融資のこと。 掲載1999/9/23 プロジェクト・ファイナンスでは、従来事業主が全面的に負っていた事業リスクを、金融機関・行政・建設会社・運営会社・出資会社などに分解して、分担させられると期待されている。 プロジェクトの収益力や返済能力が優れていれば、事業主の企業実態から分離してプロジェクト自体での資金調達が可能になるし、事業主にとってもSPC等の別法人を設立することにより、事業主の貸借対照表の中から資産・債務を計上しなくて済むためオフ・バランスが実現し、資金効率が高まる。 但し、金融機関もプロジェクト・リスクを負うことになるので貸出し金利は高くなり、法的保全・調査費用もかさむことになる。 従来からプロジェクト・ファイナンス的な融資の発想はあったが、基本は事業会社の信用・業績に裏付けられた融資であったために、事業会社の営業状態によってはプロジェクトに十分な収益性があっても融資が実現されないことがあった。 その逆に、プロジェクトの収益性が低いにも拘わらず事業会社の信用力や資金借入者の人的信用力のみを頼んで融資を継続しつづけた為に、膨大な不良債権を抱え込んでしまった事例もあった。第3セクター方式や住宅専門金融会社の融資先が良い例であろう。 そのような金融界の過去の反省の下に、プロジェクトの採算性にのみ限定した、歯止めのある融資行動を取りたいとして考え出された概念である。 しかしそのプロジェクトが短期間で終結するならば上記のような融資行動も実害が少ないと考えられるが、長期にわたるプロジェクトの場合は、経済環境の変化という当該プロジェクト単体では抗し難い事業計画の大幅変動の事態が必ず発生すると考えておかねばならない。 いかなる事業にもリスクはつきものである。にも拘わらず、個別プロジェクトの収支性のみに限定した融資行動は「角を矯めて牛を殺す」過ちを引き起こし、金融マンが姑息な刹那的成果主義に陥る可能性がある。 要は、資産の担保価値の呪縛から開放されて、人間の営むプロジェクトのロマンまでを見越した大局的な視点をもって融資の可否を判断できるようにならないといけないのだか、その様な神様は意外に少ないのかもしれない。 そしてそうであるならば、事業を遂行する者、融資をする者、事業認可をする者等が応分のリスクを負担するコーポレーテッド・ファイナンスの方が、より安定した資金回収がなされるというものではないだろうか。 掲載1999/9/26、10/3一部修正 プロジェクト・ファイナンスで期待されているような事業関係者の応分のリスク負担と言う理念を追求すると、資金の貸し手・借り手双方の建前から、その事業の収益と財産に限定した「ノン・リコース ローン」を採用することになる。 しかし「ノン・リコース ローン」の項でも触れたように事業が必要としているような十分な資金の流れが確保できるとは限らない。特に現時点のように金融機関の露骨な「貸し渋り」が起こると、金融機関の融資態度の変化でプロジェクトの資金がショートする可能性が高くなる。 そこで必要とする資金を直接資本市場から調達したいという欲求がプロジェクト推進者の内的欲求となってくる。その一つの現われが、特定資産の流動化や「不動産の証券化」であり、米国のREITのような集団投資の仕組を法制化しようと言う動きである。(2000年度中には法制化されるかも・・) 不動産証券の購入者にとって、店頭登録会社の株式や社債を購入するのとどれほどの違いが有るかと言えば、後者が企業業績に連動するのに対して前者は不動産市況に連動する程度のことでしかないのではあるが、その違いは大きいと言える。 店頭登録会社の財産は基本的には経営者と従業員の知恵であり熱意であり無体財産や動産が経営資源となっている。それに対してプロジェクト・ファイナンスはどのような形態を取ろうとも永久に不・動・産であることから開放されることは無い。 「動かない財産」であるからこそ、「動かないこと」によって被る利害得失を冷静に見極める必要があると筆者は考える。 掲載1999/ |