ノン・リコース ローン
(Non-Recourse Loan)
将来、資金の借り手が債務不履行を起こして借金の返済が出来なくなった場合でも、融資金の償還請求権が担保に取った不動産だけにしか及ばない、融資の仕方。 日本においては、これまで全て「リコース ローン」で貸付がなされており、担保に取った不動産の処分価格が融資金の弁済額に及ばなかった場合には、他の財産や人的保証で全ての債権を回収する仕組みが一般的であった。 しかし近年、PFIなどのプロジェクト・ファイナンスの需要が高まるに従って、借金の返済原資を当該プロジェクトのみに限定させたいという借り手側の事情と金融機関もそれ相当のリスク負担をすべきだと言う風潮から、米国で取り入れられている手法が浮かび上がっている。 しかし一般に考えられているほど「ノン・リコース ローン」は甘くは無いのではないかと思われる。少なくとも当該担保不動産からしか万一の場合の弁済原資が確保できないということは、融資金融機関としても相当慎重な融資行動を取るであろうと想像すべきであろう。 従来の金融機関の貸付行動は、担保としては不動産の価格の7掛けで設定すると、その後の借主の経営状態については比較的緩やかな制限しか加えていなかったのではないかと思われる。その様な行動の結果、二番抵当が付けられたり、短期賃借権が付けられたりして、債務不履行による不動産の任意売却もままならなくなり、膨大な不良資産を抱えることになったのである。(平成の徳政令で息をついているが・・。) 「ノン・リコース ローン」になると、金融機関は次のような融資行動に移行すると筆者は考える。 @どのような状態になろうとも当初の融資金以上の融資は行なわない。 A融資される金額は、当該不動産の処分可能価格から利息・損害金・処分事務費用などを差引いた金額となる。 B後順位の担保権の設定はいかなる事情があろうとも認めない。万一設定すると即、債務不履行となる。 C借主の日々の収入は、常に債権者のための債権譲渡の対象となる。即ち僅かな不履行であってもその段階で全てを差押さえられる可能性がある。 D膨大な量の約束事項を提示される。 これではプロジェクトは動かなくなる可能性が高いのであるが、資金を必要とする事業者はそれでもお金を貸してもらおうとするであろう。金が無いということは、いかに片務的な状況に身を置かざるを得なくなるかと言うことの証左である。 掲載1999/12/12 |