デュー・デリジェンス

(Due-Diligence)

 米国において不良債権等を証券化によって売却して債権を回収する際に、現金回収額の現在価値割引額の算出をベースとした不良債権の適正評価手続きを採用して、証券等の買い手の参考として提示することにより、不良債権の早期回収に役立った。

 このことから、我国においても現在価値割引法による収益還元方式の活用などによる債権並びに不動産の適正評価手続き(デュー・デリジェンス)を確立し、一般投資家の判断基準を提供しようとする。

掲載1999/10/17

 ようやく英語の綴りが判った。「最近の経済界には、グローバルだかスタンダードだか知らないが、正確な意味も知らないでやたらと素人には判らない隠語を使って得意になっている奴らが多すぎる!」と英語の不得意(いまどき珍しいかな・・・)な筆者は非常に憤慨している。

 Due=[形容詞]1.権利として支払われるべき。2.満期になった。3.それ相当の。4.十分な。

 Diligence=[名詞]a.勤勉、努力。b.注意、入念。

 その二つの言葉を組合せるとどうなるか?次の中から正しいものを選んでみましょう。

@1+a=権利として支払われるべき勤勉・・・・?

A2+b=満期になった注意・・・・?

B3+b=それ相当の注意・・・・?

C4+b=十分な入念。・・・・?

 判ったようで判らない言葉であることが、解かった。

 どうも米国人と日本人の物事の考え方に違いがある。 

 米国の不動産取引では買主が物件の瑕疵責任を負う為に契約締結後物件引渡までの間に徹底的に瑕疵の有無を調査する慣習になっているらしい。「金を持ってトンズラした売主に責任を取らせることは実際上不可能だから金を払う前に徹底的に調べましょう。」ということか。

 一方日本の場合には、通常売買契約書には「後日第三者から故障の申し入れがあった際は、売主において全て解決し、買主に一切の迷惑を及ぼさない。」と不動産の売主が瑕疵責任を負う規定がもられている。(どうせ島国で逃げ切れないのだから)「あれこれアラをほじくり返すようなことはしなさんな。」という村意識がある。

 従来はこの村意識で日本の平和を維持できたのであるが、抵当証券の詐欺事件の時のように、欲に目が眩んでよく調べもせずに手を出してコロリと騙されてしまうと自己責任を棚に上げて被害者ぶる人間と、それにコロリと同情するお人好しが多くなっている。

 資産の流動化のために不動産の証券化を推し進めようとすれば、再び同様の悲喜劇が起こらないとも限らないので、「専門家によって十分入念に調査して一般庶民の方でも判断できるように資料を調えましょう。」ということのようである。

 SPCは当該不動産を証券化して売却した後は不動産と債権・債務の管理をするのみで実質的な資産を有さないのが前提であり売主として瑕疵を担保することができないから、資産対応証券を購入しようとしている購入者の保護の観点からも詳細なデュー・デリジェンスを行う必要がある。

  証券化しようとしている不動産について、物的状況法的状況経済的状況を調査するのであるが、誰がどのように行なって、その結果について誰が責任を負うのかが明確にならないと、再び悲劇が繰返される可能性が高い。

 ダム湖の横にある山林を優良物件のように評価して銀行の不良債権を作った某不動産鑑定士のように、どんなに立派な装丁のレポートであっても良心を持たない輩が作成すると、大変な不幸をもたらす結果になる。(ダムの場合は、銀行の融資担当が不動産鑑定士に頼んだ可能性も有り得るので、その場合は自業自得であるが)

 規制緩和の時代であるから誰でもデュー・デリジェンス業務を行なえても良いが、当該証券が藻屑と消えた場合には過酷ではあるが何年後であろうとも、デュー・デリジェンス業務を行なった者の責任を追及できる仕組みを作っておく必要があると筆者は考える。

掲載1999/11/21、一部修正2000/05/21